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2026.02.24

「広告運用者はもう不要」は本当か?AI時代に求められるマーケターの条件【ウィンスリー黒瀬のキャリア激論 Vol.01】

はじめに:かつて「花形」だった君たちへ

ウィンスリー代表の黒瀬です。

私はこのマーケティング・DX・デジタル分野に特化した人材エージェントとして、13年間、数え切れないほどの候補者、そして企業の採用担当者と向き合ってきました。

これまで私が支援してきた中で、かつて間違いなく「花形」と呼ばれた職種がありました。

それが「デジタル広告運用者」です。Google広告、Facebook(Meta)広告の管理画面を巧みに操り、入札単価を1円単位で調整し、CPA(獲得単価)を改善する。その職人芸のようなスキルは、クライアントの売上に直結する魔法の杖として重宝されました。

しかし、2026年1月現在。状況は一変しました。

皆さんもすでに実感しているのではないでしょうか。「自分の仕事は、もうAIに取って代わられているのではないか?」と。

結論から申し上げます。従来の「管理画面を操作するだけのオペレーター」としての広告運用者は、残念ながら不要になりつつあります。

しかし、それは決して「広告運用の仕事がなくなる」という意味ではありません。

これからのキャリアに迷える20代、30代の若手プロフェッショナルに向けて、今、現場で何が起きているのか。そして、事業会社への転職という「狭き門」を突破するために、具体的にどのようなステップを踏むべきなのか。

現場のリアルな声と、最新のテクノロジー潮流、そして人材市場のファクトをもとに、本音で語らせていただきます。

第1章:2026年の現実 ~プラットフォームの「完全自動化」がもたらした衝撃~

まず、2026年の現在地を冷静に見つめ直しましょう。

数年前から叫ばれていた「運用の自動化」は、2025年を経て完全に「標準」となりました。GoogleのP-MAX(Performance Max)やMetaのAdvantage+ ショッピングキャンペーンなどの自動化プロダクトは、もはや「選択肢の一つ」ではなく「前提」となっています。

かつて運用者が誇っていた「キーワードの除外設定」や「細かな入札調整」「デモグラフィックのターゲティング」といった手作業は、今やAIの機械学習を阻害するノイズと見なされることすらあります。

AIは、数百万のシグナルをリアルタイムで解析し、人間には不可能な速度と精度で、最適なユーザーに、最適なタイミングで、最適なクリエイティブを出し分けています。

この状況下で、代理店の運用担当者が「私は運用調整が得意です」とアピールすることは、皮肉にも「私は最新のAI活用ができていません」と受け取られかねません。

では、広告運用という仕事はAIに完全に敗北したのでしょうか?

答えは「No」です。AIは「How(どう届けるか)」においては人間を凌駕しましたが、「What(何を届けるか)」と「Why(なぜやるのか)」においては、依然として人間の手を必要としているからです。

2026年の今、本当に必要とされている「人の手が必要な部分」とは何か。それは以下の3点に集約されます。

1. 「学習データ」の設計者(Data Architect)

AIは優秀ですが、与えられたデータが粗悪であれば、出力される結果も粗悪になります(Garbage In, Garbage Out)。

Cookieレス時代において、質の高い1st Party Data(自社データ)をいかにプラットフォームに連携させるか。コンバージョンポイントをどこに置けば、AIが「質の高いユーザー」を学習できるか。この「AIへの教育方針」を決めるのは、人間の仕事です。

2. クリエイティブの「指揮官」(Creative Director)

生成AIによって、バナーやコピーは無限に作れるようになりました。

しかし、「ブランド毀損をしていないか」「本当に顧客のインサイトを突いているか」を判断するのは人間です。

AIに指示(プロンプト)を出し、生成された無数のクリエイティブから「正解」を選び抜き、PDCAを回す。運用者の主戦場は「入札管理」から「クリエイティブのディレクション」へと完全にシフトしています。

3. 事業課題の「翻訳家」(Business Translator)

AIは「CPAを下げろ」と言われれば下げますが、その結果「質の悪いリード」ばかり集めてしまうことがあります。

事業全体のKGI(重要目標達成指標)は売上や利益であり、部分最適としてのCPAではありません。「このキャンペーンはROAS(広告費用対効果)が悪くても、LTV(顧客生涯価値)が高いユーザーが取れるなら投資すべき」といった、経営視点に基づいた判断は、AIにはまだ難しい領域です。

第2章:事業会社Webマーケ担当への道 ~「運用だけ」では通じない厳しい現実~

「代理店の激務に疲れた」「もっと自社の商品に向き合いたい」 そう言って、事業会社(広告主側)のWebマーケティング担当を目指す方は後を絶ちません。

しかし、エージェントとして率直に申し上げます。

「広告運用だけやってきました」という人材が、人気事業会社に採用される確率は極めて低いです。

理由はシンプルです。 事業会社が求めているのは「広告を回す人」ではなく、「マーケティングで事業を伸ばす人」だからです。

現在の事業会社では、広告運用自体はインハウス(内製)化が進んでいるか、あるいは高度な自動化ツールに任せています。彼らが求めているのは、広告という「点」ではなく、事業全体の「面」を見られる人材です。

もしあなたが、今すぐ事業会社への転職を成功させたいのであれば、単なる運用スキルに加えて、以下の「3つの経験・意識」を装備する必要があります。これは、私が実際の書類選考や面接のフィードバックで繰り返し耳にする要件です。

必須要件①:PL(損益計算書)意識と事業KPIへの接続

「CPAが改善しました」「CTRが上がりました」。これだけの報告では、事業会社のマーケターとしては不合格です。

そのCPA改善が、最終的にどれだけの粗利(Gross Profit)を生んだのか。獲得した顧客はその後、リピートしているのか。 広告費を「コスト」ではなく「投資」として捉え、PL(損益計算書)へのインパクトを語れるようになってください。

面接で「御社の今のフェーズなら、CPAを犠牲にしてでもシェアを取りに行くべきだと思います」といった事業戦略レベルの提言ができるかどうかが分かれ目です。

必須要件②:フルファネルの視点(特にUI/UXとCRM)

広告でユーザーをサイトに連れてくるまでが運用者の仕事ではありません。

ランディングページ(LP)のEFO(入力フォーム最適化)、その後のメールマーケティングやLINE公式アカウントでのCRM、アプリのプッシュ通知。これらすべてが一貫していなければ、顧客は定着しません。

「広告運用の改善余地がなくなったので、LPの改修提案を行い、CVRを1.5倍にしました」という実績の方が、単なる入札調整の実績よりもはるかに高く評価されます。

必須要件③:テクノロジーとデータの「実装力」

先述した通り、Cookie規制やプライバシー保護(ITP等)の影響で、計測環境の整備は年々難易度を増しています。

Googleタグマネージャー(GTM)の設定はもちろん、GA4(Google Analytics 4)の高度な分析、さらにはCAPI(コンバージョンAPI)の実装や、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)との連携など、エンジニアと対等に会話できる「テクニカルな知見」が求められます。

「計測タグが外れていたので直しました」ではなく、「サーバーサイド計測を導入して、欠損していたコンバージョンデータを20%補完しました」と言える人材は、どこに行っても引く手あまたです。

第3章:現実的なキャリア戦略 ~「インハウス支援」という最強のステップ~

ここまで読んで、「自分にはハードルが高すぎる」「今の環境ではそんな幅広い経験は積めない」と絶望した方もいるかもしれません。 

いきなり事業会社に飛び込み、即戦力としてこれらすべてをこなすのは、確かに至難の業です。

事業会社側も、即戦力前提で教育体制が整っていないケースが多く、入社後に「期待はずれ」の烙印を押されてしまうミスマッチも私は数多く見てきました。

そこで、私が13年の経験から導き出した、2026年現在における「最も勝率の高いキャリアパス」を提案します。

それは、「インハウス化支援・常駐型パートナー」への転職です。

これは単なる「広告代理店」ではありません。クライアント企業のデジタルマーケティング部門に、チーム単位、あるいは専任コンサルタントとして「常駐(またはそれに準ずる形)」し、あたかも社員のように内部に入り込んで業務を行うポジションです。

近年では、中小代理店やWebマーケコンサル企業だけでなく、大手傘下のネット専業代理店もこのインハウス支援領域に参入しており、市場としても急速に拡大しています。

その中でも特に重要なのは、ただの「運用担当」として応募するのではなく、インハウス化を支援しているポジションに応募していくことがキャリアアップの第一ステップとなります。

※具体的な企業名やポジションは別途お問い合わせください。

なぜ、このルートが「最強」なのか?

1. 「事業会社側の視点」を獲得できる

代理店の外側からでは見えなかった、クライアント社内の力学や予算取りのプロセス、他部署(営業や開発)との連携、さらには売上データといったリアルな情報に直接触れることができます。

これらの経験は、事業会社への転職時に求められる「事業会社側での実務経験」とほぼ同等の価値を持ちます。

2. 最新のインハウスノウハウが身につく

今、多くの大手企業が「広告運用のインハウス化」を進めていますが、十分なノウハウを持たず、体制構築に課題を抱えているケースも少なくありません。

こうした企業に対して、インハウス化支援を専門とする企業は「プロ」として現場に入り込み、体制構築そのものをリードしています。

単なる「運用代行」ではなく、「自走支援」を行う点に大きな特徴があります。

この経験は、将来事業会社へ転職した際に、「インハウス組織の立ち上げリーダー」といったハイクラスなポジションを狙うための強力な武器となります。

3. 失敗が許容される「守られた」環境

いきなり事業会社に転職し、十分な成果が出せなければ、期待とのギャップに悩むケースも少なくありません。

一方で、支援会社経由での常駐であれば、所属はあくまで支援会社にあり、ナレッジやチームのサポートを受けながら業務に取り組むことができます。

様々な業界のクライアントを経験しながら、実践的に「事業会社マーケターとしての経験」を積むことが可能です。

「常駐」は「下請け」ではない

かつて常駐というと、「下請け」や「受け身の業務」といったネガティブなイメージを持たれることもありました。

しかし、DXが進む現代においては、クライアントと一体となり、アジャイルに意思決定と実行を繰り返すこのスタイルこそが、最先端の働き方となっています。

実際に、この「インハウス支援」の現場で実績を積み、クライアントからヘッドハンティングを受けたり、誰もが知る有名企業のCMO(最高マーケティング責任者)候補として転職したりする事例も数多く存在します。

第4章: ~2026年を生き残るために~

広告運用者の皆さん。

これまで培ってきた「数字に対する執着心」「仮説検証のスピード」「変化への適応力」。これらは、AI時代においても決して色褪せることのない、極めて重要なポータブルスキルです。

ただ、そのスキルの「使い所」を変える時期が来ています。

これからは、管理画面と向き合うだけでなく、「AI」を使いこなし、「データ」を武器に、「事業」と向き合う時間へとシフトしていく必要があります。

いきなり理想の事業会社に転職できなくても、焦る必要はありません。

「インハウス支援」というステップを挟むことで、市場価値は大きく高まります。

 

「代理店出身の運用者」から「事業成長を牽引するデジタルマーケター」へ。その転換点は、まさに今です。

皆さんのキャリアは、AIによって閉ざされたのではありません。

むしろ、AIという強力なパートナーを得たことで、より本質的なマーケティングへと回帰するチャンスを手にしています。

自分のスキルセットに何が足りないのか、どのような環境で経験を積むべきか、具体的な求人やキャリアパスについて知りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。

きれいごとは言いません。事実に基づいた、あなただけの生存戦略を一緒に描きましょう。

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執筆者

黒瀬 雄一郎(くろせ ゆういちろう)|株式会社ウィンスリー 代表取締役 / ヘッドハンター

株式会社ウィンスリー 代表取締役ヘッドハンター 2003年より人材業界に従事。2012年、マーケティング・DX分野に特化した人材紹介会社ウィンスリーを創業。

13年以上にわたり、広告代理店、事業会社、ベンダーなど、デジタル分野の採用支援・キャリア支援を行う。

業界の裏事情にも精通し、忖度なしのキャリアアドバイスに定評がある。

黒瀬 雄一郎のプロフィールを見る

▶ 出版書籍:稼げるデジマ人材キャリアアップ AtoZ(ぱる出版)

▶ 出演動画:電通・博報堂・サイバーエージェントに転職するには?/広告代理店を中心にマーケティングキャリアを徹底解説

※本コラムはマーケティング&DX専門人材会社ウィンスリーの独自の見解に基づき執筆され一部画像も独自に作成したものです。該当企業の公式見解とは異なり、本コラムの責務はすべてウィンスリーにあります。