
「このままSEOを続けていて、5年後も食べていけるでしょうか」
ここ数か月、SEO領域の方との面談でこの問いを受けない週がありません。
相談される方はSEO支援会社のコンサルタント、事業会社のオウンドメディア担当、広告代理店でコンテンツを扱ってきた人などさまざまです。共通しているのは、AIが答えを返す検索が当たり前になり、自分が積み上げてきた経験の価値が目減りするのではないかという不安です。
結論から言えば、検索まわりの仕事がなくなることは考えづらいでしょう。変化が進むのは「誰に向けて、何を指標に最適化するか」です。
本コラムでは、AI検索で何が起きているのか、AEOやGEOと呼ばれる言葉をどう整理すればよいのか、仕事のどこが変わってどこが変わらないのか、そしてご経験されてきた領域別にどんな道があるのかを、転職支援の現場から整理します。
Table of Contents
第1章:検索の前提が変わった
3人に1人以上が、検索でAIを使っている
サイバーエージェントのGEOラボが2026年2月に実施した調査では、検索時に生成AIを使うと答えた人は37.0%でした。2025年10月の調査では31.1%だったので、わずか4か月で5.9ポイント増えています。20代では半数を超え、10代は66.9%に達しました。
使われているサービスはChatGPTが29.1%で最も多く、Google検索のAIモードが21.0%で続きます。注目したいのは利用後の行動です。AIの回答に出てきたURLをクリックすることが「よくある」「時々ある」と答えた人は54.4%、AIに薦められた商品やサービスをあらためて検索する人は69.0%でした。
つまり、AI検索は従来の検索を置き換えたのではなく、その手前に新しい入口を増やした状態です。ユーザーはAIに聞き、気になったものを自分で検索し直し、サイトを訪れています。
計測の環境も動き出した
企業側の計測環境も整いはじめました。GA4には生成AIアシスタント経由の流入を見るチャネルが加わり、Google Search Consoleでも生成AI経由の表示を確認できるレポートがテスト導入されています。これまで「AI経由の流入は測れない」と言われてきた状態から、少しずつ数字で語れる段階に移りつつあります。
ただし、取れるデータは万能ではありません。たとえばSearch Consoleの生成AI向けレポートでは、表示回数は見られてもクリック数やユーザーが打ち込んだプロンプトまでは分かりません。何をもって成果とするかを自分たちで決める必要がある、というのが現状です。
第2章:AEO・GEO・LLMOという言葉を整理する
この領域の用語は、提唱する企業ごとに揺れています。転職活動で混乱しないよう、いま出回っている言葉を整理しておきます。
- AEO(Answer Engine Optimization):AIが返す「答え」に自社の情報が使われることを目指す考え方
- GEO(Generative Engine Optimization):生成AIの回答で引用・推奨されることを目指す考え方
- LLMO(Large Language Model Optimization):大規模言語モデルに自社の情報を正しく理解させる取り組み
呼び方は違っても、狙っていることはほぼ同じです。「検索結果で上位に並ぶことではなく、AIの回答の中で言及され、引用され、指名されること。」ここを目的に置いた取り組みの総称だと考えて差し支えありません。
面接でどの言葉を使うかに神経質になる必要はありません。むしろ、企業ごとに定義が揺れている前提で、相手がその言葉で何を指しているのかを確かめられる人のほうが評価されます。
Googleの公式見解は「特別な要件はない」
ここで押さえておきたいのが、Google自身の立場です。Googleは公式ドキュメントで、AI OverviewsやAIモードに表示されるための特別な技術要件はないと明言しています。AI専用のファイルを置く必要も、専用の構造化データを足す必要もありません。インデックスされ、スニペットとして表示される資格があることが条件で、あとは従来どおりのSEOの基本が効くという説明です。
この一文は、キャリアを考えるうえで重要です。AI検索への対応は、これまでのSEOを捨てて新しい技術を学び直す話ではありません。「土台は同じで、その上に新しい確かめ方が乗る。」そう捉えるのが実務に近い理解です。
第3章:仕事は何が変わり、何が変わらないか
変わらないもの
ユーザーが何を知りたいのかを読み解くこと、情報を構造化して分かりやすく示すこと、一次情報と専門性で信頼を得ること。これらはAIが相手でも変わりません。むしろ、AIが情報源として選ぶかどうかは、書かれている内容の正確さと独自性に左右されます。
技術面も同じです。クロールされる状態を保つこと、ページの表示速度や構造を整えることは、AI検索の時代でも引き続き必要です。
変わるもの
大きく変わるのは、「成果をどう測るか」です。
従来は、検索順位と流入数が中心の指標でした。AI検索では、自社やブランドがAIの回答にどれだけ登場するか、どのような文脈で言及されるか、競合と比べてどの程度推奨されやすいかが問われます。順位という単一のものさしが使えなくなり、複数のAIで定点観測しながら、自分たちで指標を設計する必要が出てきました。
具体的に考えてみましょう。ある商材について「おすすめは何か」とAIに尋ねたとき、自社の製品が候補に挙がるかどうか。挙がるとして、どんな特徴とセットで語られるのか。価格の安さで紹介されるのか、サポートの手厚さで紹介されるのか。ここまで観測してはじめて、次に何を整えるべきかが見えてきます。順位を1つ上げる作業とは、問いの立て方が違います。
もう1つは、「打ち手の幅」です。AIの回答は、自社サイトの情報だけで組み立てられるわけではありません。レビュー、メディア記事、第三者の言及など、サイトの外にある情報も材料になります。サイトの中を整える仕事から、ブランドがどう語られているかを広く整える仕事へと、守備範囲が広がっています。
第4章:新しく生まれた役割
求人の世界にも変化が出ています。2026年に入り、「AEO」「GEO」を冠したポジションが実際に募集されはじめました。大手のデジタルエージェンシーで既存のSEOコンサルタント職にGEOを加えた求人が出たり、AI検索領域の専門組織を立ち上げた支援会社がアナリストやディレクターを募集したりしています。
こうしたポジションで任されるのは、おおむね次のような仕事です。
- AI検索での露出を測る方法を設計し、定点観測する
- 競合と比べてどう言及されているかを分析し、課題を洗い出す
- 提案や定例の場で、数字の意味と次の打ち手をクライアントに説明する
- 推奨されやすい情報設計を、コンテンツや技術の担当者と一緒に組み立てる
注目したいのは、求められる資質が「AIの知識」そのものではないことです。答えの決まっていない領域で問いを立て、仮説を作って検証を繰り返せること。分析ツールの習熟より、この姿勢が重視される傾向があります。業務でAIを使い込んできたかどうかより、自分で触って確かめてきたかが見られる、と言い換えてもよいでしょう。
求人票は看板より中身で読む
この領域の求人票は、同じ名前でも中身がそろっていません。既存のSEOコンサルタント職に新しい領域を足しただけのものもあれば、AI検索の分析を専門に担う新設の役割もあります。支援会社か事業会社かでも、日々の仕事はまったく違います。
求人票を確認する際は、次の3点を確かめましょう。①測定の方法を誰が決めるのか。②提案や顧客との対話まで担うのか、分析に専念するのか。③コンテンツや技術の担当者が社内にいるのか、自分が兼ねるのか。この3つが分かれば、入社後の1年がかなり具体的に想像できます。
新しい領域の求人ほど、面接の場で役割がまだ固まっていないこともあります。その場合は不安材料と捉えず、自分で役割を定義できる余地があると考えるほうが実態に近いです。
第5章:ご経験領域別の勝ち筋
SEO出身
最も有利な位置にいます。検索意図の読み解き、情報設計、技術的な整備、効果検証という一連の流れは、そのまま新しい領域でも通用します。
足りないのは、新しい指標での検証経験だけです。複数のAIに同じ問いを投げて回答の違いを記録する、自社や担当クライアントがどう言及されているかを継続して観測する。このようなことは現職でも始められます。実施にやってきた人と、言葉だけ知っている人の差は、面接では一目で分かりますので、ぜひ体験しておきましょう。
広告運用・データ分析出身
指標を設計し、検証の設計を組み立てる力が評価されます。AI検索の領域は、まだ業界共通のものさしがありません。何を数えれば意味があるのかを自分で決められる人は貴重です。
弱点になりやすいのは、コンテンツや情報設計の知見です。検索意図からコンテンツの構成を考えた経験が薄いと、分析だけの人という評価に落ち着いてしまいます。コンテンツ側の担当者とともに企画・改善した経験を具体的に語れるよう整理しておきましょう。
コンテンツ・編集出身
一次情報を取材し、専門性のある記事を作れる力は、AIが情報源を選ぶ時代にむしろ価値が上がります。AI向けだからといって、機械的な文章を書く必要はありません。
課題となりがちなのは数字の扱いです。作った記事がどう読まれ、どう成果につながったのかを、自分の言葉で説明できるようにしておくこと。ここを語れるかどうかで、評価が大きく変わってきます。
事業会社のインハウス担当出身
自社メディアやコーポレートサイトを担当してきた人には、事業の数字と結びつけて語れる強みがあります。流入がどれだけ売上や問い合わせにつながったのかを追ってきた経験は、支援会社側に移っても歓迎される経験です。
留意しておきたいのは、担当してきた商材が自社のものに限られることです。業種が違えば検索のされ方も変わるため、自社以外の事例にどれだけ関心を持って追ってきたかを問われます。普段から他社の見え方を観測しておくと、面接での具体性が変わります。
第6章:年収の目安と、選考で問われること
年収のレンジ
AI検索の領域はまだ立ち上がったばかりで、年収が特別に跳ね上がっているわけではありません。公開されている求人を見ると、検索領域のコンサルタント職はおおむね400万円台から1,000万円程度のレンジに収まっています。自社メディアを大規模に運営する事業会社のスペシャリスト職では、800万円台から1,000万円を超える水準の募集も見られます。
レンジの幅が広いのは、同じ「検索」という看板でも、担う範囲が企業ごとに違うためです。実行の担い手として入るのか、指標の設計や提案まで任されるのか、チームを率いるのか。年収はこの役割の違いで決まります。求人票のレンジだけを並べて比べるより、「どこまでを自分の責任範囲にできるか」で比べるほうが、転職後の納得感は高くなります。
新しい領域だからといって、未経験で大幅に年収が上がることは基本的にありません。一方で、立ち上げ期に関わった経験は数年後に大きな財産にもなります。短期の年収と、数年後の市場価値のどちらを優先するのかは、事前に整理することをおすすめします。
選考で問われること
この領域の選考では、知識を問う質問よりも、取り組んできたプロセスを問う質問が多くなります。
よく聞かれるのは、答えが定まっていないテーマにどう向き合ってきたかです。前例のない課題に対して、どんな仮説を立て、どう検証し、何が分かったのか。うまくいかなかった検証でも構いません。検証の設計を自分の言葉で説明できるかどうかが見られます。
もう1つは、AIを自分で触ってきたか経験です。業務で本格的に使えていなくても、個人的に試し、気づいたことを言語化できていれば十分に伝わります。逆に、言葉の定義を知っているだけで手を動かした形跡がないと、関心の薄さとして受け取られます。
第7章:支援会社と事業会社、どちらで経験を積むか
AI検索の領域で経験を積める企業は、大きく2つに分かれます。
支援会社(エージェンシー・コンサルティング会社)の利点は、短期間で多くの事例に触れられることです。業種もフェーズも違う案件を並行して担当するため、どの打ち手がどんな場面で効くのかという引き出しが早く増えます。まだ方法論が固まっていない領域では、この経験量が市場価値につながりやすいです。
事業会社の利点は、同じサービスに腰を据えて、長い時間軸で成果を追えることです。AI経由の流入が実際の売上や会員登録にどうつながったのかを、最後まで確かめられます。広告やCRMなど他のチャネルと合わせて設計できる点も、支援会社では得にくい経験です。
迷ったら、いまの自分に足りないほうを選ぶのがおすすめです。手数が足りないと感じているなら支援会社、事業の数字につなげた実感が足りないなら事業会社。どちらを選んでも、AI検索という領域が立ち上がる時期に関わった経験そのものが、数年後の強みになります。
終章:ものさしが変わるときは、先に動いた人が有利になる
検索の領域は、これまでにも何度も大きな変化があり、そのたびに「終わり」が語られてきました。そのたびに仕事がなくなったのではなく、評価されるものさしが変わってきただけです。
今回も同じ構図です。順位と流入数で語られてきた成果が、AIにどう言及されるかという新しい指標に置き換わりつつあります。そして、ものさしが変わる時期は、すでに検索を扱ってきた人にとって追い風です。新しい領域に見えて、実のところ土台は変わっていないからです。
必要なのは、新しい資格でも最新のツールではなく、「自分の担当領域でAI検索の見え方を観測し、何が効果的だったのかを経験していくこと」です。その積み重ねが、半年後には他の候補者との差になります。
いまの経験がどの企業で評価されるのか、どんな役割から入るのが現実的なのか。棚卸しから一緒に考えることもできます。
ウィンスリーは、マーケティング・DX・AI領域に特化した転職エージェントです。デジタルエージェンシーや事業会社の採用担当者と日々情報交換を重ね、求人票には表れない役割の違いや、選考で見られるポイントを把握しています。
AI検索の領域でキャリアを広げたい方、いまの専門性がどこで活きるのか知りたい方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

執筆者

針谷 将幸(はりがや まさゆき)|株式会社ウィンスリー キャリアコンサルタント(国家資格)
慶應義塾大学総合政策学部卒業。学生時代にコンサルファームを設立しデータサイエンティスト兼経営者として活動。
その後、国内大手ERPベンダーで営業・ITコンサルを経験後、ヘルスケア領域のコンサルやSaaS企業での中途採用を担当。
現場と人事両面の経験を活かし、キャリア支援を行っている。
▶ 針谷 将幸のプロフィールを見る
※本コラムはマーケティング&DX専門人材会社ウィンスリーの独自の見解に基づき執筆され一部画像も独自に作成したものです。該当企業の公式見解とは異なり、本コラムの責務はすべてウィンスリーにあります。

