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2026.05.21

【2026年アクセンチュア特集 第2回】Accenture Song の「大変貌」――クリエイティブが広告の上流へ

はじめに――第1回の「地図」から、Song というピースへ

第1回では、アクセンチュアが2025年9月に断行した「Reinvention Services」という大統合と、2026年に矢継ぎ早に起きた変化の全体像を描きました。7つのReinvention Partnersと3つのReinvention Enginesがマトリクス状に連携する構造、Faculty買収によるCTO刷新、AI昇進連動制度の導入——ここまでが「地図」です。

第2回からは、その地図の各ピースを掘り下げていきます。最初に取り上げるのは、Accenture Song。

Songは他のファームにはない、マーケティング&クリエィティブを主管としているチーム。マーケ専門のエージェントであるウィンスリーも、Songへの支援は最も実績のある組織となっています。マーケター・クリエイター・CX人材の転職先として、前組織のアクセンチュアインタラクティブから支援させていただいています。

ただ、正直に言うと、「SongってAC内の広告代理店みたいなものですよね?」という認識のまま相談に来る方が、今でも少なくありません。その認識のまま選考に臨むと、面接で的外れな話をして落ちるケースが出てきます。

Song は今、何者なのか。そこから始めます。

Song の歴史を3分で振り返る

現在の Accenture Song の前身は「Accenture Interactive」です。2009年に立ち上がり、2010年代に入ってからM&Aを本格化させました。英国のデザインファーム Fjord(2013年)、クリエイティブエージェンシー Karmarama(2016年)、そして2019年には日本にも馴染みのある Droga5 の買収——これが決定的な転換点でした。2022年に現在の「Song」へブランド刷新、さらに2025年にはデジタルサービス開発の「ゆめみ」との買収合意まで至っています。

David Droga という人物は、広告業界でいわば「生きた伝説」です。彼が率いる Droga5 は、独立系エージェンシーでありながら世界最高峰のクリエイティブを出し続けた会社でした。アクセンチュアがその Droga5 を買収したとき、業界は「コンサルがついにクリエイティブを本気で取りにきた」と受け止めました。

その後 2025年度(2025年8月期)の売上は約200億ドル、前年比8%増に達しています(出所:Campaign Asia, September 30, 2025)。WPP や Publicis といった世界最大手の広告グループに匹敵する規模です。コンサルティングファームの一部門が、これだけの数字を出す——それ自体が、もはや「エージェンシー」という括りが意味をなさなくなっているサインだと言えます。

Droga から Oteh へ――この交代が示すもの

David Droga という時代

「あなたは未来に向かって成長するか、過去に向かって縮んでいくかのどちらかだ(You either grow into the future or you’re shrinking into the past)」——これは Droga が残した言葉ですが、Song の哲学をよく表しています。

Droga が Song に持ち込んだのは、クリエイティブの「本気度」でした。コンサルファームはともすれば「考える会社」になりがちですが、彼は「作れる集団」としての側面を Song に植えつけた。その結果、Song はエンタープライズ規模のビジネスをやりながら、クリエイティブの文化と人材の質を保ち続けることができた。2025年5月28日に交代が発表され、新年度となる9月1日付で正式に Vice Chair へ就任——いわば「創業期を担った人物が次のフェーズにバトンを渡した」という文脈で読む方が正確です(出所:Accenture newsroom, May 28, 2025)。

Ndidi Oteh が引き継いだもの

後継の Ndidi Oteh が Song CEO に就いたのは2025年9月1日。それ以前は Song のアメリカ地域責任者で、Accenture には14年在籍。アクセンチュア社内でNikeアカウントを担当するグローバルクライアントアカウントリードを務めていた人物です。実はこの仕事ぶりがDrogaの目に留まり、2023年にSongに引き入れられたという経緯があります(出所:Fast Company, October 2, 2025)。

Droga が「クリエイティブを体現する人」だとすれば、Oteh は「ビジネストランスフォーメーションを動かす人」と表現するのが近い。Droga 本人も彼女を「クライアントを深く理解し、ブランドの力を知る人物」と評しています(出所:Fast Company, October 2, 2025)。

Oteh の就任後の発言で最も印象的なのは、「私たちはマーケティングのことだけを話して市場に出て行くわけではない(We do not go to market talking only about marketing)」という言葉です(出所:Digiday, January 6, 2026)。カスタマーサービス、コマース、セールス、デザイン、デジタルプロダクト——マーケティングはその一部にすぎない、というのが Song の現在地です。

この交代が示すのは、Song が「クリエイティブで差別化する時代」から「エンタープライズ変革の基盤を担う時代」に移ったということだと、ウィンスリーは見ています。

Accenture Song リーダーシップ交代 David Droga時代とNdidi Oteh時代の比較図

図1 ─ David Droga 時代と Ndidi Oteh 時代の比較

「広告の上流」とは、具体的に何を指すのか

従来のエージェンシーとの決定的な違い

従来の広告代理店は、クライアントの「広告予算(メディアバジェット)」を起点に動きます。キャンペーンを作る、メディアを買う、運用して結果を出す——この繰り返し。そのサイクルの中での関係は、基本的にキャンペーンごとのプロジェクト単位です。

Song が今やっているのは、その「手前」の話です。

具体的には、企業のデータアーキテクチャをどう設計するか。CDP・CRM・MA・コマースプラットフォームをどうつなぐか。生成AIを使ったコンテンツ制作体制をどう再構築するか。AIが日常化した後のマーケティング組織をどう設計し直すか——こういった、企業の「マーケティングの仕組みそのもの」を作る仕事です。

ウィンスリーが把握している Song のプロジェクト事例を見ると、大手都市銀行のアプリUIUX改変、アパレルブランドリブランディング、大手化粧品メーカー、大手飲料メーカーのCX開発などが並んでいます。いずれも「広告を作った」案件ではなく、「ビジネスの仕組みを変えた」案件です。

なぜ Song がその「上流」に入れるのか

ここが重要で、Song 単体の力だけではこのポジションは取れません。

Oteh はこう語っています。「Song は Accenture に支えられている。それはテクノロジーの基盤を意味する。データを本当に理解すること、AI基盤を構築するために何が必要かを知ること——それがアクセンチュアが毎日やっていることだ」(出所:Fast Company, October 2, 2025)。

アクセンチュアのコンサルティング部門やテクノロジー部門がすでにCEOやCFOのそばにいる。そこに Song が「マーケティング変革」の文脈で入っていける。この構造がポイントです。一度、企業のマーケティング基盤の設計・構築に関与すれば、その関係はキャンペーンのたびに入れ替わるエージェンシーとは質が違う。インフラとしての継続的な関与に変わっていきます。

Accenture Song が広告の上流に移動した構造 従来の広告代理店モデルとの比較図

図2 ─ 従来の広告代理店モデルと Accenture Song のモデル比較

2026年、Song に起きた2つの変化——そして2025年から続くメディア参入

①AI昇進連動制度(2026年2月)

Song がスタッフの昇進評価にAI活用度を組み込む新制度を導入したことは、Campaign Live が2026年2月24日に報じています。

これは「AIを使いましょう」という奨励策とは次元が違います。昇進できるかどうかが、AIをどれだけ使いこなしているかにかかる——つまり、AIが「仕事の道具」から「評価の基準」になった、ということです。同じタイミングで、2024年4月に買収した「Unlimited」ブランドも廃止されました。TMWブランドは存続し、Nelson Bostock と Sport Unlimited が統合される形に(出所:Campaign Live, February 24, 2026)。

転職を考えている方への実際のインパクトは明確で、「AI、使ってはいます」では通らなくなっています。面接では「どのツールを、どのプロセスに、どう使って、何がどう変わったか」まで具体的に話せることが前提になってきています。

②エージェンティックコマースへの投資(2026年3月)

2026年3月23日、アクセンチュアは Accenture Ventures を通じて、エージェンティックAIコマース企業「DaVinci Commerce」への戦略的投資を発表しました(出所:Accenture newsroom, March 23, 2026)。

エージェンティックコマースとは、AIエージェントが人間の代わりに商品を調べ、比較し、購入まで完結させる——そういう世界観のことです。Oteh 自身は「ブランドはもはや人間に対してだけでなく、AIシステムに対してどう認識・推薦・行動させるかを設計しなければならない」と言っています(出所:Accenture newsroom, March 23, 2026)。

マーケティングの領域がここまで広がっている、ということです。SEOやリスティング広告の発想では対応できない世界が、もう始まっています。

③メディア領域への本格参入(2025年から布石、現在進行中)

Oteh は「現在のメディアプランニング・バイイングのモデルは、2年で存在しなくなる」とはっきり言っています(出所:Campaign Asia, September 30, 2025)。Song はその言葉通り、すでに2025年から具体的に動いています。

2025年6月、豪州で通信大手OptusのメディアアカウントをDroga5とSong Media として一体受注。同月、IPG Mediabrands のグローバルプレジデントだった Dimitri Maex をグローバルマーケティングプラクティスリードとして採用しました(出所:Mi-3, June 3, 2025 / Adweek, June 18, 2025)。

Oteh 自身はメディア領域がまだ「非常に小さい」と認めつつも、「未来に向けて構築・提携・買収する」という戦略の方向性を明確にしています。2026年現在、このOptus事例をひな形に、メディアとクリエイティブとテクノロジーを一体化した新しいモデルを本格稼働させている段階です。Song がメディア機能を本格的に持つようになれば、WPP・Publicis・Omnicom との競争軸が変わります。日本のマーケターにとっても無関係ではない動きです。

Accenture Song 2026年に加速した変化 AI昇進連動制度 エージェンティックコマース メディア参入

図3 ─ Accenture Song の変化と方向性

では、どんな人が Song に合うのか

今まで述べてきたのは主にグローバルな動きであり、日本にそのまますぐにフィットするものだけではないです。メディアバイイングは日本の大手広告代理店、メディアを中心とした独自の商習慣もあり、またクライアントも事業開発とマーケティングは別部門が担うなどクライアント事情によるものが多いためです。

クライアントがあってのコンサルファームであるため、まずはクライアントの商習慣含めた理解や経験がきちんとあることが大前提です。

書類でまず問われること

Song 関連のポジションは、「変革に関与したか」という視点で書類を読まれます。施策を実行した話だけでは弱い。組織をどう動かしたか、プロセスをどう変えたか、データ基盤にどう関わったか——そこが問われます。

加えて2026年以降は、AI・データとの接点を具体的に書けるかどうかが重要になっています。「生成AIを活用したコンテンツ制作フローを設計し、制作工数を30%削減した」のような粒度が理想です。

クライアントワーク経験の有無も見られます。社内業務だけでなく、外部のクライアントに提案し、実行し、評価されてきた経験——特にこれがない場合は、それに近い経験をどう表現するかが腕の見せどころになります。

面接で必ず出る問い

「あなたの業務でAIをどう使っていますか?」——これは2026年の Song 選考では必ずと言っていいほど出てきます。「使っています」で止まると即アウト。「どのツールを、どのプロセスに、どういう効果が出たか」まで具体的に答えられる準備が必要です。

もう一つ、「Song をなぜ選ぶのか」という問いも深掘りされます。「大きな裁量で変革に関われるから」は正直なところ弱い。Song が今何者で、何を目指しているかを自分の言葉で語れているかどうか——この第2回を読んでいただいた方には、その理解が少し深まっていれば幸いです。

第2回のまとめ

Accenture Song は「クリエイティブエージェンシー」ではなく、企業のマーケティング変革を上流から担うオペレーティングレイヤーです。David Droga から Ndidi Oteh へのリーダーシップ交代は、その変化をわかりやすく体現しています。

2026年のAI昇進連動制度・ブランド整理・エージェンティックコマース投資は、Song がさらにその方向性を加速させているサインです。Song が求める人材は「広告を作れる人」ではなく、「AIを実務に組み込みながら、企業のマーケティング基盤そのものを変えられる人」に変わっています。

第3回は「データ&AI」の観点からアクセンチュアを読み解きます。Faculty買収でCTOが刷新された後のAI and Data エンジンの実態と、日本のデータサイエンティスト・AIエンジニアが転職する際に知っておくべき情報をお伝えします。

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執筆者

宮崎洋

宮崎 洋(みやざき ひろし)|株式会社ウィンスリー コンサルタント

外資系医療機器メーカーで営業・マーケティング・経営企画・デジタル戦略と幅広い業務に従事。

医師に英会話を教える中で、悩みに耳を傾けフィードバックすることで深く感謝される体験をし、コーチングに目覚める。「人」への関心の強さを活かし、現在はプロコーチとしての活動と並行して、コンサル・デジタル分野を中心とした人材エージェントとしても活躍中。

アクセンチュアをはじめとした大手・外資系ファームへの支援実績多数。

宮崎 洋のプロフィールを見る

※本コラムはマーケティング&DX専門人材会社ウィンスリーの独自の見解に基づき執筆され一部画像も独自に作成したものです。該当企業の公式見解とは異なり、本コラムの責務はすべてウィンスリーにあります。